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幻のイトウ

メーターオーバー

2022年7月10日、その日は前日から雨、湿原の川はいつもより水量が多く笹濁りの状態。産卵を終えたイトウは河口域で体力を回復し、6月を過ぎる頃より再び上流域へ遡上を開始する。この時期、大きなイトウを毎年何本も確認しており、確実に居るとの予想が先行して、雨と寒さに耐えながら釣行を開始した。6月19日、本流にてイトウを釣り上げたのだが写真撮影に失敗(目視で70cmほどカメラを構えているスキに逃げられる)、そのショックが頭から離れない自分。翌週の6月26日、次の7月3日とイトウを追うがかなわずこの日である。「次こそ必ず写真に収める」そう思いながら竿を振るもアタリはない。何か所かある好ポイントをいつもより丁寧に探るが気配がない。雨足がだんだんと強くなり体も冷えてくる中、「今日もダメかな」とそろそろ引き返そうと思っていた時に着いたポイントが、いつも自分が気になっていた場所であった。

「ここで出なければ止めよう」そう相棒に伝え1投目、思う場所にルアーが入り「キャスティング上手くなったかな」などと考えながらルアーを沈め、一巻、二巻、三巻…..でリールが逆回転。「ギーーツ」止めることができない。いまだかつてない豪快強烈な引き、ドラグを締めれば棹が折れてしまう、耐えるしかない。スプールの逆転が止まったところでリールを巻きながら、イトウが掛かったのは間違いないが、この魚は一筋縄ではいかないと腹を括った。一人では上げることは絶対にできないと判断し、少し上流にいる相棒へランディングを頼む。

とは言うものの増水気味で川は深いが、まわりに浅瀬などなくどう考えても川へ立ちこんでもらうしかなかった。尋常じゃない棹のしなりと鳴り続けるドラグ、巻いては出されを繰り返す私を見て相棒も覚悟を決めたらしく、すでにご入水している。獲り込みの用意はできた。だが、イトウは全然寄ってこない、重くて寄せられない。それだけでなくその間6回もジャンプをしている、半端じゃない大きさだ。「絶対に釣る」と念じるがごとく、強烈な引きに耐え続けていると時間の経過とともに少しづつ寄ってきた。そのイトウを見て相棒が「ネットに入らないかもしれない」などと弱気な事を言ってくる。実は私も同じことを思っていたのだが、「なんとしても収めてくれ」と無理強いし、ようやくネットイン。正確ではないが獲り込みまで10分近く掛かっていたと思う。計測と針外しのため相棒がネットを持ち上げようとするが、重くて上がらない。上にいた私がようやく持ち上げたのだが、10kgはあると思われる。

その大きさとうれしさに我を忘れそうになるが、格闘の末釣り上げた魚体へのコンディションに気遣ってすぐに水際へ戻すことにした。しばし付き合ってもらった後、住家である湿原の川へ戻すことができた。生涯、忘れない思い出の一つである。

管理人

作成者: 管理人

湿原の川に生息するイトウやアメマスの魅力に引き込まれ、道東河川で趣味の釣りを楽しんでいます。自然が好きで山菜やキノコ採りにもハマっています。オールドなルアーを集めています。