ヒグマ 第1部 魚を追う先に漂うただならぬ気配

よもやま話

背後に気配を感じた瞬間、心臓が跳ね上がった。静寂に包まれた湿原で何かがこちらを見ている——。これは、道東の湿原河川でイトウやアメマスを追う中で私が何度も直面してきたヒグマとの境界線の記録です。
魚釣りと言う趣味に熱中し過ぎて怖い体験をした人は私だけではないはず…釣りに限らず、登山、キャンプなど自然に足を運ぶという事はそれなりのリスクを伴うものです。ヒグマの足跡や実際に直面した過去の遭遇エピソードを時系列、あるいはインパクト順にピックアップしていきます。

フィールドに残された「証拠」たち(写真集)

クマが餌を探す際や、自身の存在を示すために木に登った際につけるそう、足跡と同じく「今まさにヒグマのテリトリーにいる」というリアルな警告

遠目から見ると熊の顔に見えた

上の写真は熊とは関係無いのだが、釣りをするフィールドには常に彼らが居るということを意識しながら細心の注意を払っている。

エピソード

山頂から響く警告の咆哮

20年も前と思うが釣り好き三人でアメマス釣りを楽しみ車へ戻る途中のこと。釣った魚の大きさやアメマスが出てきたポイント、スプーンで釣れたとかミノーが良かったなどヒットルアーについてあれこれ話していると、岸際に熊が歩いた跡がくっきりと残されていた。先ほどまで自分達が歩いてきた道なので熊だとすれば途中で出くわすはず、「自分たちに気付き、藪に身を隠し、通り過ぎたタイミングで出てきたのだろう」としか思えない。一人が「途中で何か気配を感じたが気のせいと思い話さなかったけどやっぱり熊だった」と話したところでもう一人が「熊の叫び声が聞こえる」と言ったので、会話を止め静かにしていると山の上の方から「ヴォー」「ヴォォォ」と低くて太いうなり声が何度も聞こえてくる。しばらく大きな音が響いていたが無言で車まで戻った記憶が忘れられない。

川岸の見えない恐怖

週末となれば雨降りで釣りにならないことも多々ある。それが4週連チャンともなると流石に落ち着かない。行っても釣りにならないのだが雰囲気だけでも味わいたいと、ついつい贅沢な思いを馳せてしまうのが私の悪い癖。案の定、川の濁りは酷く釣りにはならないのであるが、ルアーを投げては釣り歩いていると対岸から「ガサガサ」と何かが歩く音が聞こえる。手持ちの鈴を「ジャリンジャリン」鳴らすとその音はピタリと消えるので、気にせず釣りを続けるとまたしても「ガサガサ」と何かが歩く音が聞こえる。その音を聞いた私は「反対岸を釣り人が歩いているのだろう」と思い「お~い!釣り人か~」と何度か声に出したが無反応で「シーン」としている。その時「変だな」と気づいた。「人ではない」…鹿だったら跳ねるような音がする「ガサガサ」ではなく「ワッサワッサ」というような表現。人ではないとすれば熊しかいないと怖くなり、川は濁っているし魚が出てくる様子もないので次にその音が聞こえたら帰ろうと考えた。そうして釣り歩いたすぐの所で私が歩く岸の方向に向かって熊の足跡を発見、途中で途切れている。「熊はかなり前に私の気配に気づき、川を渡って反対岸を歩いていたのだろう」と分かりゾッする。恐怖のあまり車に着くまで鈴を鳴らしていた、ある年の7月の出来事。

突然の橋下からの唸り声

秋のきのこ採りシーズンに親から電話か掛かってきた。両親は私が良く行く釣り場でボリボリを探していたらしいのだが、父曰く、何事もなかったが母が藪中で「ガサガサ」する黒い獣を見かけ「熊がいる熊がいる!」と話していた、釣りに出掛けるのであればその場所へは行かない方が良いとのことであった。親の言う通りそこで釣りはしなかったのだが、帰る途中にある場所なので川の様子だけ見てみようと橋の際に車を止め降りてドアを閉めた瞬間、「ヴゥゥ…」「グルルル…」と低いうなり声が聞こえてきた。「橋の下に熊がいる!」間近で耳にした獣の唸り声に唖然としながら帰宅したという話。

引き返さざるを得なかった獣の匂い

イトウ釣りにのめり込む相棒を連れ湿原の川へ出掛けた6月。朝早くから出掛けたが、イトウが着くポイント手前でもの凄い獣臭が立ち込める。今すぐここに居たと思われるような痕跡(足跡や寝そべっていたような跡)と独特な獣の匂いに身の危険を感じ、やむなく引き返すことに…
この付近での釣りを思い返せば、アメマスを掛け夢中になっているところ対岸を「ガサガサ」やられたことが2度ほどあった。恐らくは鹿ではなく熊だったと未だに思うことがある(恐怖のあまり、竿を片手にもう片方の手で鈴を鳴らしていた)。相棒はこの後別の流域で立派なイトウを釣り上げているのだが、決して「結果オーライ」とは言えない出来事だった

釣りを楽しむために

湿原はヒグマの生活圏です。自然のフィールドで釣りを楽しむ以上「怖いから行くな」とは言い切れませんし、野生動物との共存はあり得ないことだと考えています。彼らのテリトリーにお邪魔するという謙虚な姿勢を忘れないよう心掛けています。ここに記載したことは私が何年もかけて学んだ教訓ですが、もし皆さんが入られる際は、必ず熊撃退スプレーを携行し、複数人で行動するなどの対策を徹底してください。断定は出来ませんが私の経験上、近くに熊がいる時は鳥の「さえずり」が無くなり急に静かになるような気がします。山師の話では熊は木の上が好きなので山の中では高い場所にも気を配るべきだとのこと。釣りへ出掛ける際は「今日はあの川へ出掛ける」と行き先を家族へ伝えることも重要でしょう。

「当ブログの一部画像には、AI技術(生成・補正)を活用しております。」

第2部へ続く

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